乱九朗一代

原作 雁屋 哲

劇画 本館 功

あらすじ

城南大學応援団親衛隊長である隼乱九朗は銀座を仕切る隼組組長の跡取である。ある日、父・隼大造が何者かに襲われ他界してしまう。襲ったのは銀座制圧を目論む南部財閥当主・火垣士郎に命令された日本最大の暴力団である川浜組であった。
大造が息を引き取る前に南部財閥の野望を知り、乱九朗は単身南部ビルに押し込むが逆に捕まって、警察の拘置所に入れられてしまう。しかし、そこは警察にまで権力が及ぶ南部財閥による乱九朗処刑を遂行する場所であった。
その拘置所で同じ処刑されるために投獄された碇銅八に出合う。そして、碇に真の敵である播磨鉄水という男の話を聞く。播磨は戦前で東京駅で時の首相である大藤信三を刺し、右翼の世界で大物になり、GHQにもうまく取り入り権力を伸ばし、日本を陰であやつる男で、しかも、宿敵・火垣士郎は彼の娘婿であった。そして、碇は播磨に刺された首相・大藤の孫である。
その話を聞き、真の敵を認識した乱九朗は、碇と共同で警察の処刑部隊を退け脱出に成功。(実際に話を聞いたのは警察から脱出したかなり後だけど)全国の応援団の仲間とともに戦うのであった。

 

対権力という、雁屋氏ならではの作品だが、完全に自分の作品の寄せ集めでレベルの低い焼き直しになっていて、この作品も他の雁屋作品同様に社会構造について説明がでてくる。
例えば、「自衛隊は憲法に違反して作り上げた違憲組織だ。(中略)政変が国内で起た時に国民に銃を向けるためにふだんは人目につかぬように息をひそめてやがる」等、凄い理論を簡単に言ってのけている。氏によると自衛隊は国民を制圧するための組織であり、ふだんは人目につかないらしい。(相変わらず的を得ているのか妄想なのか微妙な(微妙か?)違憲もとい意見である)
冒頭で父親が襲われるのは「男大空」で使ったし、真の敵である播磨は影の総理(男組)、また碇と出会うエピソードも軍艦島刑務所(男組)と同じ。全国の応援団は関東豪学連や少年刑務所の仲間(男組)。(オカマがでてくるとこも一緒)また、乱九朗に御付きの爺が出てくるのは「野望の王国」で使ったパターンである。
あれっ?て感じる場面も雁屋作品にしては多い。序盤で川浜組組長が火垣に「恐ろしい人だ」(わざわざ一面ぶち抜きの絵で説明)と恐れていたのに、播磨の脅威が無くなったとたんに「ヤクザを使うとツケがくるんじゃい」等と最後は火垣に脅しをかけていた。播磨が(火垣の)後にいるから怖かったにしては心の中のセリフで怖いなんて言うのはなぁ。(後付けマンガの常識っていってしまえばそれまでだが)
時代はラブコメに突入していて、この手の作品を描く人には辛い時代だったが、(雁屋氏の場合、「男は天兵」等それなりに人気があった作品もあったが)この作品は時代とは関係なくダメな作品といえるだろう。が、たまに出てくる変な構図の絵といい、”妙なオーラ”が充満している作品なだけに捨てがたいものがある。(捨てても問題はないが)
そして、雁屋氏が「美味しんぼ」の大ヒットを飛ばすのはラブコメブームが終わってからである。

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